幼少期と舞台の時代
4歳でクラシックバレエを始め、退屈なはずの基礎練習が大好きな、少し珍しい子どもでした。
踊ることだけでなく、身体を細かく観察することが何よりも楽しかったのです。
やがて17歳でミュージカルの世界へ。
数か月間、週に10回以上の公演をこなす日々の中で、怪我をせず最高のパフォーマンスを維持するため、
心身のコンディションを徹底的に整えることが習慣になりました。
出産・変化・ピラティスとの出会い
妊娠中には静脈瘤、産後には尿漏れにも悩まされました。
女性の身体がいかに変化していくのかを身をもって体験し、
「もっと自分の身体を理解し、コントロールしたい」と強く思うようになります。
その思いからピラティスの指導者資格を取得。
さらに成果を出せる指導を目指し、筋骨格系機能解剖学とコンディショニングを学びました。
40代、アトピーとの闘い
もう一つ、解剖学を学ぶ大きなきっかけがありました。
40代でアトピー性皮膚炎が悪化し、ステロイド治療をやめる決意をしたのです。
全身が赤くただれ、顔もムーンフェイスになり、人に会うことすらつらい日々。
痛みと外見の変化で心も沈みました。
そんな中、気持ちを切り替えるために「学び」に意識を向け、
自宅で解剖学の勉強を始めました。
2週間ほとんど動けずにいたある日、
犬のために思いきって外へ出てみました。
帽子を深くかぶって顔を隠しながら歩くその一歩は、
「私がここに生きている」という実感を取り戻す第一歩でもありました。
歩くたびに、風・光・空気の感覚が心を癒してくれました。
次第に“歩けることそのものが喜び”になり、
いつしか散歩は私の「再生の時間」になっていました。
歩くことが教えてくれたこと
最初は足元ばかりを見ていた視線が、
少しずつ前方へ、そして遠くの景色へと上がっていきました。
身体が整うと、心も前を向く——
その変化を自分の中で確かに感じた瞬間でした。
「歩ける」という当たり前のことが、どれほど尊いか。
それを伝えたいと思い、歩行指導やパーソナルトレーニングを始めました。
そして、スペイン532kmの巡礼へ
58歳の春、私は一人でスペインの「カミーノ・デ・サンティアゴ巡礼」に挑戦しました。
ブルゴスからサンティアゴ・デ・コンポステーラまで、24日間で532km。
毎日20km以上を歩きながら、冷たい風、石畳、痛む足、
そして出会う人々の優しさに包まれました。
身体の限界を感じながらも歩き続けるうちに、心が研ぎ澄まされ、
「歩くことは、生きることそのもの」だと深く実感しました。
この巡礼は、私の人生の象徴でもあります。
どんなに遠くても、一歩ずつ歩けば必ずたどり着ける。
そのことを、身をもって学びました。
現在、そしてこれから
今は、歩行器を使わなければ動けない親の介護をしています。
その姿を見つめながら、「50代の今だからできること」を強く感じます。
薬や病院に頼る前に、自分の力でできることをしておきたい。
筋肉・骨格・栄養・運動を理解すれば、
防げる不調や老化はきっとたくさんある。
私と同年代の方々にも、同じ思いを抱く方が多いのではないでしょうか。
「検査では異常なし」と言われても、身体の不具合に悩む方々の力になりたい。
その一心で、今も1対1のパーソナルトレーニングを行っています。
私の使命
パーソナルトレーナーとは、
“未来のあなたの身体に責任を持つ仕事”だと思っています。
一人ひとりの身体の個性を尊重し、
「できた」「楽しい」と感じられる瞬間を増やしていく。
それが私のレッスンの目的です。
加齢とともに減っていく筋肉量を維持・回復することは、最高の自己投資。
ピラティスで関節を整え、正しい歩行で身体を支える。
それによって、不調の起きにくい身体をつくっていけます。
「根気強く寄り添ってくれるから、続けられる」
そう言っていただけることが、何より嬉しい瞬間です。
これからも、
運動を通じて未来を明るく捉えられる人を増やしていきたい。
身体と心が軽やかに、そして美しく歩き続けられる人生を——
それが、私・寿羽エリーの願いです。




